最高の建築士事務所をつくる方法

設計者のための独立開業・運営ガイド

著者:湯山重行

装幀:石間淳

A5判、本文1色、1,800円(税抜)

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「最高の~」がマジックワードだった時代

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副題のとおり、建築士のための独立開業指南本です。

著者の湯山重行先生は、のちに『500万円で家を建てる!』(飛鳥新社)、『60歳で家を建てる』(毎日新聞出版)と、ニッチなテーマで執筆活動も旺盛になられる小田原市在住の建築家。実質的デビュー作が本書でした。

当時、湯山先生は「建築知識」誌上で連載を始められたばかりでした。

タイトルは、『設計屋稼業――Y氏の上京日誌』。

地元の小田原市から、代々木駅前のマンションにサテライトオフィスを構えられた湯山先生が、その顛末を「事務所の開業と運営」というテーマで面白おかしく綴っていくという内容です。代々木事務所への引越しが連載開始直前に実現したばかりというタイミングでした。

ただ、この連載、編集長的にはイマイチだった(らしい)。

まだ湯山先生と面識がなかった私(配属3年目)は、「あの連載、打ち切りになるのかな」と、なんとなく外野から見ていたのですが、そのさなか湯山先生の担当編集者が突然退職。私に後任のお鉢が回ってきました。

 

くだんの代々木事務所で初めてお目にかかり、次回以降の連載内容について打ち合わせを始めた私たちでしたが、ものの数分と経たないうちに、話は本筋とは関係ない「くだらなすぎる雑談」(←褒め言葉)に激しく逸れていきます。

ある若夫婦の自宅を設計していたら、旦那さんの父親(中田カウス似の会社経営者)があれこれ世話を焼きに出てきたのだが、その父親というのが地元では有名な違反建築の常習犯で、市の建築指導課から湯山先生も違反建築グループの一味に間違われたとか、山中湖畔にある元保養所(現在廃墟)をリノベーションして住居兼レストランにしたいというお客さんに現地まで強引に連れて行かれ、建物を見ながらリノベーションの構想をあれこれ聞かされた挙句、「で、ご予算は?」とうかがうと、「200万」と言われてずっこけたとか。キャラの濃いお客さんの話が、次から次へと出てきます。

「先生、この際事務所の運営話はどうでもいいですから、次回からそれを書きましょう」。

数カ月後。

打ち切りがささやかれていた連載はとうの昔に危機を脱し、湯山先生の「お施主さん列伝」は人気連載の一つに数えられるほど大化けしました。

業界内読者率も異常な高さで、先生は仕事で訪れる先々で「湯山さんって、もしかしてあの湯山さんですか!」と初対面の人から著名人扱いされるというオマケまでついてきたそうです。

そんなわけで、この『最高の建築士事務所をつくる方法』は、本来なら連載のなかで書くはずだった読者のためになる話を、私がムリヤリためにならない話に変えてしまった罪滅ぼしとしてつくらせていただいた、「遅れてきたY氏の上京日誌」といえます。

ニッチなテーマですが、早々に増刷がかかりました。

なぜかそれは、「最高の~」というタイトルのおかげだということになり、以降エクスナレッジから出版される本には、「最高の~」というタイトルがむやみやたらと付けられるようになりました。

たしかに、「最高の~」を付けた本は想定の2割増くらいで売れたような気がしないでもないですが、こればかりは検証のしようがありません。

本書が、私の書籍編集デビュー作でした。

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