伊礼智の住宅設計

「標準化」から生まれる豊かな住まい

著者:伊礼智

装幀:大杉晋也

A4判、本文4色、3,800円(税抜)

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あえて「デカイ、重い、高い」

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いまや押しも押されもせぬ人気建築家・伊礼智先生の設計ノウハウをまとめた大型本です。本編224ページ、付録255ページという特殊な構成で、電話帳のような分厚い本になりました。

本編は、伊礼先生の代名詞である「設計の標準化」をめぐる半自伝的内容。図面あり、対談あり、関係者インタビューありと「伊礼智全1冊」といった趣きの集大成的作品です。3,800円という高額にもかかわらず、発売直後から飛ぶように売れていきました。

伊礼先生は、私が「建築知識」編集部に配属されてすぐの仕事でお世話になって以来のお付き合いです。特集や連載の仕事で何度となくお世話になってきましたが、その間、伊礼先生の評価・知名度は年を追うごとにぐんぐん上昇、本書を企画した時点で「著書を出せば間違いなく売れる」という下地が十分整っていました。

そうなると編集者としては、「普通の本」をつくって普通に売れても、ちっとも面白くありません。あらかじめ売れるのが分かっているなら、何か新しいことに挑戦しないと仕事をした気にならない。

いま思えば、魔が差したわけです。

特別付録として「家一軒分の図面を原寸で掲載」を思いついてしまったのは、完全に悪魔の仕業としか思えません。

建築家にとって図面はある種の企業秘密です。

とくに詳細図については、掲載NGという方もいらっしゃいます。

割合からいえばOKのほうが断然多いですが、それでも「一軒分の図面をすべてを掲載したい」とお願いすると、おそらくほとんどの方が難色を示されるのではないでしょうか。

しかし、伊礼先生にはそれがまったくない。

図面は常にオープン。

載せたかったらいくらでも載せてくださいというスタンスです。

そこに甘えてつくらせてもらった「特別付録」でした。

​かくして、「デカイ、重い、高い」という三重苦を背負った本が出来上がったわけですが、そこは伊礼先生のブランド力で軽々とはね返され、予想どおり順調に売れていきました。

本書の製作中、伊礼先生に「本当にすべての図面を掲載して大丈夫なんですか?」とうかがったところ、その答えがふるっていました。

「だって、この本が出る頃には、僕はもうその図面使ってないから」。

「設計の標準化」(標準化については長くなるので割愛しますが、とても共感できる発想です。興味のある方はぜひ本書をお読みください)という言葉に、建築家のクリエイティビティを否定した響きを感じ取る人がいるかもしれませんが、伊礼先生の標準化は、「標準」とはいいながら常に進化発展を遂げ、新鮮さを失わない標準だということです。

標準化といえども、きのうの図面ときょうの図面は同じでない。

実力と自信のある建築家にしかできない芸当に、心底感服いたしました。

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